MODE SHOPPING 小野玲子の目利き 霜月
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霜月 深まりゆく色のぬくもり

霜が降りるころ。秋の名残と冬の気配が、静かにまじり合う季節。旧暦で十一月は「霜月(しもつき)」と呼ばれ、朝の光に白くかがやく屋根や、吐く息の白さに、季節の移ろいを感じる頃です。出雲に集った神々がそれぞれの国へ帰る「神帰月(かみきづき)」神楽が響く「神楽月(かぐらづき)」とも呼ばれ、自然とともに“祈り”や“静けさ”を感じる月でもあります。冷たい空気の中で、街の色が少しずつトーンを落とし、グレイッシュな光の中に、あたたかな色がより美しく映える頃です。
今月は、そんな冬のはじまりにふさわしい色、今季のトレンドの色の一つ、「バーガンディ」をテーマにお届けします。
深い色が呼び覚ます〜冬のエレガンス

空気が澄むほどに、心が惹かれるのは「深い色」今季のトレンドカラーは、バーガンディやボルドーのような、赤系の深みを帯びたトーンです。どちらも温かみのある赤ですが、バーガンディはわずかに紫を含んだ“洗練の赤”、ボルドーは茶を帯びた“クラシックな赤”といわれます。バーガンディ(Burgundy)〜フランス・ブルゴーニュ地方のワインに由来する、“ごく暗い紫みの赤”深みと艶をあわせ持つ色です。一見、ボルドーやワインレッドと似ていますが、その違いは「明度」と「彩度」にあります。
バーガンディ(Burgundy):ボルドーより茶色みが少なく、紫を含む暗い赤。彩度・明度ともに低く、最も深く艶のあるトーン。
ワインレッド(Wine Red):赤みが強く、彩度・明度ともに高い。鮮やかで軽やかな印象の“赤ワインの表層の色”。
ボルドー(Bordeaux):赤に茶を帯び、やや明度が低く温かみのある赤。落ち着きとクラシックな深みを感じさせるトーン。
バーガンディは“光を吸いこむような赤”。低彩度で深く、冬のグレイッシュな光の中でこそ美しく映えます。モード感と知性を併せ持ち、冷たい空気の中に静かな情熱を感じさせる色。それが、今年の主役カラー「バーガンディ」です。とはいえ、どのトーンも“深紅の美しさ”という点では同じ。すべてをひっくるめて「バーガンディ」と呼びたくなるほど、その世界は奥深く、惹きつける力に満ちています。
※これらの色の定義は、JIS慣用色名・日本色研、および海外のカラーデザイン基準(Pantone・Color Hexなど)でもほぼ一致しています。なお、画面上の色は実際の色みと異なる場合がございます。
バーガンディが出会う6つの色


バーガンディ(Burgundy)と出会う6つの色
この深い赤を引き立てるのは、ネイビー、グレー、そしてベージュやエクリュ(生成り)といった穏やかなトーン。冷たさと温もりのバランスが生まれ、コートの襟元やテーブルのアクセントにも上品に調和します。冷たい空気の中で、ふと心に灯るようなこの色は、冬の街のグレイッシュな風景にやわらかな温度を添えてくれる存在。静けさの中に、ぬくもりを感じる。そんな“冬の色の調和”を、バーガンディが教えてくれます。
バーガンディが出会う6つの色をご紹介いたします。

Black(ブラック)
艶を帯びたレザーの黒。深紅の隣で“意志のある強さ”を際立たせます。

Navy(ネイビー)
滑らかなウールの青。知的でモードな印象をもたらす、冬の定番配色。

Gray(グレー)
無彩の静けさが、バーガンディの艶を美しく引き立てます。透明感のある都会的な組み合わせ。

Ecru / Beige(エクリュ/ベージュ)
スエード調の生成り色。やわらかく包み込むように、深紅の温度を和らげます。

White(ホワイト)
清らかな布の白。冬の光を受けて、バーガンディに凛とした輝きを添えます。

Olive(オリーブ)
ややグレーを含んだ深いカーキトーン。ナチュラルなのにどこか都会的な、こなれた雰囲気を添えます。バーガンディは、どの色と出会っても“静けさの中に温度を残す”色。冬の装いにも、暮らしの景色にも、さりげなく気品を添えてくれるトーンです。冷たい風に、コートの襟を少し立てたくなる季節。街の色がトーンを落とすほどに、深いバーガンディが、静かに美しく映えます。
心を落ち着かせてくれる深紅のぬくもりを、この冬はファッションに纏って。静けさの中に凛とした強さを感じるそんな“霜月のスタイル”を楽しんでいただければ幸いです。
新たな自分の再発見!
ライフスタイルを豊かにしてくれる色との出会いから楽しい時間をお過ごしくださいませ。
※写真はイメージです。



